葉酸は、妊娠中に必要な栄養素だというイメージがあります。
確かに葉酸は、胎児の健康な発育のためには欠かせません。
そのため、厚生労働省も「妊娠を計画している人、妊娠の可能性がある人は1日あたり400μgのモノグルタミン酸型葉酸を摂取すること」を推奨しています。
葉酸の必要性については広く知られていて、多くの人が認知していることでしょう。
では、「葉酸」とはどのようなビタミンなのでしょうか。
詳しく見ていきたいと思います。
葉酸は水溶性のビタミン
ビタミンは、「脂溶性」のものと「水溶性」のものとに分けられます。
脂溶性ビタミンには、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKがあります。
一方水溶性ビタミンは、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、葉酸、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンH(ビオチン)があります。
ビタミンB群はすべて水溶性のビタミンになります。
葉酸はビタミンB9とも呼ばれており、ビタミンB群の1つなんですよ。
水溶性ビタミンは、水に溶けやすく熱に弱いという特徴があります。
水で洗ったり、火を通すことで水溶性ビタミンは大半が失われてしまいます。
そのため、食事から摂ることはなかなか難しいと言われていますね。
水溶性ビタミンは水に溶ける性質があるため、たくさん摂っても尿として排出されていきます。
脂溶性ビタミンは過剰摂取の心配がありますが、水溶性ビタミンは過剰摂取はほとんどありません。
葉酸に関しては、まれに「葉酸過敏症」と呼ばれる葉酸の過剰摂取による症状が出ることもあります。
葉酸過敏症は、毎日1~10mgもの葉酸を摂り続けたときに起こります。
厚生労働省が定めている1日あたりの推奨摂取量(妊娠している人以外)は、240μgです。
1mgは1,000μgですから、葉酸過敏症になる量というのは1,000μg~10,000μgということになります。
明らかに過剰摂取になっていることが分かるでしょう。
体内での吸収率なども考えると、食事のみでこれだけの葉酸を摂ることはほぼ不可能です。
食事から葉酸を摂っても、基本的に不要な分は尿になってしまいますから、過剰摂取になることはほとんどないのです。
葉酸過敏症になるのは、薬やサプリメントなど「食品以外」から過剰に葉酸を摂取している場合です。
葉酸サプリメントの多くは妊婦をターゲットにしており、それゆえ1日分が400μgに設定されているものが多いです。
1日分の容量をしっかりと守っていれば、葉酸過敏症になることはありません。
葉酸過敏症の症状としては、発熱、じんましん、かゆみ、呼吸障害などがあります。
また、葉酸を過剰摂取することにより、「ビタミンB12欠乏」の発見が遅れることがあります。
葉酸欠乏、またはビタミンB12欠乏によって起こる症状に、巨赤芽球性貧血というのがあります。
これは赤血球がきちんと作られず、赤血球のできそこないばかりが増えてしまうために起こる貧血のことです。
どちらが欠乏しても同じように巨赤芽球性貧血になるのですが、ビタミンB12欠乏の場合は貧血症状の他に下肢のしびれや運動失調などの神経症状が表れます。
このときビタミンB12欠乏に気付かずに葉酸を服用してしまうと、貧血症状は改善しますが神経症状は当然改善することはありません。
葉酸の投与により神経症状は悪化してしまいますし、ビタミンB12欠乏の発見が遅れてしまうことがあります。
ビタミンB12欠乏による貧血は悪性貧血ですから、早めの発見と治療が重要になるのです。
水溶性ビタミンである葉酸は、何度も言いますが食事のならば過剰摂取になることはありません。
サプリメントやフォリアミンなどの葉酸薬を服用している人は、自分の体調などをしっかりと管理することが大切です。
水溶性ビタミンの効率的な摂取方法は?
冒頭でお話ししたように、水溶性ビタミンは水に溶けやすく、熱に弱いです。
そのため、調理の過程で大半が失われてしまうと言われているのです。
葉酸は緑黄色野菜やレバーなどに豊富に含まれているのですが、基本的には加熱調理をしてから食べることになります。
では、葉酸を豊富に含むホウレン草を例にとってみましょう。
ホウレン草には、100gあたり210μgもの葉酸を含んでいます。
この数字だけ見ると、「ホウレン草を200g食べれば妊娠中に必要な葉酸が摂れる!」と思うかもしれませんね。
しかし、実際に体内に吸収されるのは含有量の約4分の1の50μgにまで減ってしまうのです。
ホウレン草をゆでること、水にさらすことで葉酸を失ってしまいます。
そのため、葉酸を食品から摂るのなら、できるだけ「生のまま」食べられるものを選びましょう。
煮物やスープにした場合は、きちんと汁まで飲むことがポイントです。
葉酸だけでなく、美容に欠かせないビタミンCも水溶性ですから、摂取するときはできるだけ無駄にしないように意識したいところです。