葉酸は、私たちが生きるためには欠かせない栄養素です。ビタミンの一種なのですが、ビタミンCなどと比べると、葉酸は明らかに認知度は低いといえます。
妊娠を計画している人、妊娠中の人なら葉酸と聞いてピンとくると思いますが、妊娠とは無縁の男性や、年配の人にとってはあまり聞きなれない栄養素かもしれません。
妊娠前や妊娠中に葉酸が必要だと言われたのは意外と新しく、ここ15年くらいのことです。それ以前では、特に「葉酸を摂るべき」とは言われていなかったのです。
妊娠中に葉酸がたくさん必要なのは、葉酸が核酸を合成し、細胞分裂を促進する働きがあるためです。
葉酸がないと核酸を合成することはできないので、正常な細胞分裂は行えなくなります。葉酸のこの働きから、赤ちゃんの健康な成長に欠かせないと言われるようになったのですね。そんな葉酸は、妊娠中にはサプリメントなどから毎日摂ることが勧められています。
それはなぜなのでしょうか。
葉酸は水溶性ビタミンである
葉酸は、水溶性のビタミンです。ビタミンには水溶性と脂溶性の2種類があるのですが、葉酸を含むビタミンB群は水溶性です。
熱に弱く、水に溶ける性質を持っています。
ビタミンB群の他には、ビタミンCも水溶性のビタミンです。水溶性ビタミンというのは水に溶けるその性質から、体内に蓄積しにくい特徴があります。
たくさん摂っても、不要な分は尿として排出されてしまいます。一方、ビタミンAやビタミンD、ビタミンEなどの脂溶性ビタミンは体内に蓄積していきます。
脂溶性ビタミンは熱に強く、水に溶けることはありません。特に妊娠中に懸念されているのは、ビタミンAの過剰摂取ですね。
葉酸は体内に蓄積しませんが、脂溶性ビタミンであるビタミンAなどは体内に蓄積していきます。妊娠中にビタミンAを過剰摂取すると、赤ちゃんの奇形リスクが高まると言われているのです。
葉酸は過剰摂取の心配はほとんどありませんが、脂溶性ビタミンは過剰摂取を気にしなければなりません。
葉酸は肝臓に一時的に蓄積される
葉酸はビタミンですから、当然食品などに含まれています。主に緑黄色野菜や果物などに含まれていますね。
食品の葉酸はポリグルタミン酸型葉酸といい、糖やタンパク質と結合した状態で存在しています。
体内で糖やタンパク質と遊離し、小腸の粘膜の酵素によってモノグルタミン酸型葉酸に分解され、はじめて吸収されます。
吸収された葉酸は、その50%ほどは肝臓に蓄積されます。先ほど「水溶性ビタミンである葉酸は体内に蓄積されない」という話をしました。
それなのに「肝臓に蓄積される」とは一体どういうこと?と思いますよね。
ここでいう肝臓への蓄積は、一時的なものでしかありません。一時的に肝臓に蓄えられ、変換されて胆汁へ移行し、消化管から吸収されたのち必要な細胞へと供給されていく、ということです。
肝臓を拠点にしているだけであり、いつまでも蓄積しておけるわけではないのです。
葉酸を体内で使うために肝臓に蓄えられているだけなので、脂溶性ビタミンのようにいつまでも貯めておけるものではありません。
葉酸は毎日摂らなければならない
ここまでの話ですでにお分かりの人もいると思いますが、葉酸などの水溶性ビタミンは、毎日摂らなければなりません。
妊娠中の人以外なら、特別意識をしなくても普段の食事で葉酸が足りなくなることはほとんどありません。
しかし妊娠中の人は、普段の食事に加えてサプリメントから400μgの葉酸を摂ることが推奨されています。
サプリメントの葉酸は体内に吸収されやすく加工されたモノグルタミン酸型葉酸になります。体内に溜めておけるのなら、一度にまとめて葉酸を摂ることも可能でしょう。
しかし、葉酸はそうではありません。
何度もお話ししているように、過剰に摂っても尿として排出されてしまうのです。そのため、「毎日」葉酸は摂らなければなりません。
もちろん葉酸は食品から摂ることもできるのですが、食品の葉酸は吸収率も低く、効率のよい葉酸摂取方法とはいえません。
妊娠中のように確実に葉酸を摂らなければならない!という人は、やはりサプリメントから摂取することがおすすめです。
ただし、サプリメントの葉酸は過剰摂取の心配もあります。吸収率が良いため、サプリメントを大量に飲んでしまうのは危険です。
赤ちゃんに悪影響を及ぼすこともありますし、発熱やじんましん、かゆみ、呼吸障害などの葉酸過敏症の症状が出ることもあります。
葉酸は体内に蓄積されないから、と安易に考えてしまうと、取り返しのつかないことにもなりかねません。
サプリメントは1日分の容量を守り、正しく飲むことを忘れないでください。
まとめ
葉酸は水溶性ビタミンなので、必要量を毎日摂らなければなりません。妊娠中は特に、赤ちゃんのためにもサプリメントから確実に葉酸を摂っていきましょう。妊娠中に必要な量は400μg、上限は1,000μgということを、必ず頭に入れておいてくださいね。