葉酸は、ビタミンB12とともに赤血球を作る働きがあります。
貧血というと鉄分が真っ先に思い浮かびますが、貧血の改善に必要なのは鉄分だけではないんですね。葉酸の不足による貧血は、赤血球が作られなくなるため血液検査をすればすぐに分かります。
では、葉酸の血中濃度はどのくらいなら正常なのでしょうか。血中濃度が低いとどのような疾患が疑われるのでしょうか。
ここでは、葉酸と血中濃度の関係についてくわしく見ていきたいと思います。
葉酸の血中濃度が低いと葉酸欠乏症の疑いがある
葉酸は水溶性のビタミンで体内での吸収率も低いのですが、いろいろな食材に含まれているため、病気になるほど不足することはほとんどありません。
しかし偏った食生活をしている人や、葉酸代謝遺伝子多形などによって葉酸が不足しやすい人もいます。
ではここで、葉酸の血中濃度の基準値をご紹介します。
- 血清葉酸→4.4~13.7ng/ml
- 赤血球葉酸→140~628ng/ml
こうしてみると、特に赤血球葉酸の値は基準値(正常値)にずいぶん幅があるように感じます。
この基準値よりも明らかに葉酸の血中濃度が低い場合、「葉酸欠乏症」が疑われることになります。
葉酸の血中濃度が低くなる原因には、
- 巨赤芽球性貧血
- アルコール依存症
- 低栄養状態
- 壊血症
- ビタミンB12欠乏症
- 妊娠
などがあります。
また、これらの他にも薬の飲み合わせなどにより、葉酸の血中濃度が下がることもあります。
たとえば、経口避妊薬(ピル)や解熱鎮痛剤(アスピリン)などを服用していると、葉酸の血中濃度を下げることになります。
葉酸不足によって引き起こされるもの、血中濃度を下げる原因は他にもありますので、どのような原因で血中濃度が低いのかをしっかりと調べる必要がありますね。
葉酸は血中ホモシステイン濃度を低下させる
ホモシステインという物質を知っていますか?ホモシステインというのはアミノ酸の一種で、体内でメチオニンが代謝されるときに一時的にできるものです。
メチオニンは必須アミノ酸の一種ですね。メチオニンには肝機能をアップさせる働きがあります。
お酒をよく飲む人など、積極的にメチオニンを摂取している人もいるかもしれませんね。
メチオニンは代謝されるとき、一時的にホモシステインになります。そして、ホモシステインの一部は肝臓で再びメチオニンとなります。
メチオニンにならなかったホモシステインはシステインというアミノ酸になり、尿として排出されるという仕組みです。
通常は「メチオニン→ホモシステイン→メチオニン」という過程で代謝されていくので、血液内にホモシステインがたくさんあるなんてことはありません。
しかし、ホモシステインが再びメチオニンになるためには葉酸とビタミンB6、ビタミンB12などのビタミンB群が必要不可欠なのです。
つまり、葉酸が不足すると血中ホモシステイン濃度が上昇してしまうということ。ホモシステイン濃度が高まると、どんなことが起こるのでしょう。
もっとも知られているのは、動脈硬化の原因になる、ということです。動脈硬化は血液の流れを滞らせ、高血圧などの原因にもなります。
葉酸をしっかりと摂っていれば、ホモシステイン→メチオニンという代謝経路はスムーズに行われていきますので、血中ホモシステイン濃度が上昇することはありません。
葉酸は妊娠中に必要な栄養素というイメージがありますが、健康のためにも欠かせない栄養素なんですね。
まずは食生活の見直しから
たとえば、
- 体調不良で病院へ行って検査をしたら葉酸の血中濃度が低めだった。
- 血中ホモシステイン濃度が高めだと言われた。
などがあったら、まずは食生活の見直しをすることをおすすめします。葉酸は多くの食べ物に含まれているのですが、圧倒的に野菜に多いです。
上記のようなことを指摘される人の場合、多くは野菜が不足しているなど、食生活が偏っています。
昔ながらの日本食を日頃から食べている人なら、葉酸の血中濃度が低くなることも、ホモシステイン濃度が高くなることもありません。まずは野菜を食べる習慣をつけてみましょう。
葉酸は、ホウレン草や菜の花などに豊富に含まれていますよ。野菜を中心に、バランスよく食事をすることを意識してみてください。食生活を改善するだけで、一般の成人男女が1日に必要な葉酸量を補うことは可能です。
妊娠中の場合はさらに多くの葉酸が必要なので、食事だけでは難しいかもしれません。
妊娠している人、妊娠を計画している人でなければ、すぐにサプリメントに頼るのではなく、健康管理の基本でもある食生活の見直しから始めてください。
葉酸は熱に弱く水に溶ける性質があるので、できるだけ生のまま食べられるものから摂るのがおすすめです。
まとめ
葉酸の血中濃度というのは、病院で血液検査をしなければ分かりません。貧血などを疑われたときも、すぐに葉酸の血中濃度を調べることはありません。葉酸の血中濃度を調べるということは、それだけ体のどこかに異常があるということです。
葉酸が著しく不足している場合は、葉酸の薬などが用いられることもあります。健康に長生きするためにも、血中濃度を指摘されたらそれを改善するためにできることをするべきです。
葉酸は私たちの体で生命維持に欠かせない働きをしていますので、少し意識して摂取するようにしてみるといいですね。