葉酸という栄養素を知っていますか?葉酸はビタミンB群の一種で、特に妊娠中には欠かせない栄養素だと言われています。
では、葉酸は妊娠中にだけ摂っていればいいのでしょうか。
答えはノーです。
もちろん妊娠中は普段よりも積極的に、多く葉酸が必要になりますが、妊娠していないときでも葉酸は必要なんですよ。それはなぜなのでしょうか。ここでは、葉酸は何のために摂るのか、葉酸は何に効く栄養素なのかをお話ししていきます。
妊娠中に葉酸を摂る理由とは
ではまずは、妊娠中に葉酸を摂る理由についてお話ししましょう。妊娠中の葉酸効果については、2002年から母子手帳にも記載されているので、ご存じの人もいるかもしれませんね。
妊娠中、特に妊娠初期に葉酸摂ると、赤ちゃんの先天性の障害リスクを減らすことができます。妊娠4週から8週頃までの間に、赤ちゃんの脳や脊髄のもととなる神経管のほとんどは作られます。
この時期に葉酸が足りていないと、DNAの合成がうまくいかずに細胞分裂が失敗する確率が高まってしまいます。すると神経管が塞がれてしまい、「神経管閉鎖障害」という先天性の障害を患ってしまいます。
神経管の上部が塞がれた場合は無脳症となり、流産または死産となります。神経管の下部が塞がれた場合は二分脊椎症といい、下半身麻痺や障害などが出てしまいます。
この時期に葉酸をしっかりと摂ることで、神経管閉鎖障害のリスクは70%も軽減できるんですよ。
妊娠中に葉酸を摂る最大の理由が、この「赤ちゃんの先天性の障害リスクを減らす」ということなのです。
一般的に知られているのは神経管閉鎖障害のリスクに関するものですが、ダウン症のリスクの軽減にも効果があります。
ダウン症は、遺伝子情報がうまく伝達されなかったために起こる、染色体異常の1つです。
葉酸を摂ることでDNAの合成がしっかり行われるようになれば、これらの障害のリスクはずいぶん減らすことができるのです。
ただ、これらの障害は遺伝的な要因もあるため、葉酸を摂っても100%防ぐことはできません。
妊活中・出産後の人への葉酸の効果
妊活中の人への葉酸の効果としては、子宮の環境をよくして着床をサポートするというものがあります。妊娠力を高めることができます。
妊活サプリの多くに葉酸が含まれているのは、先ほどお話しした妊娠初期の赤ちゃんへの働きによるものがメインですが、妊娠しやすくする効果もあるんですね。
出産後の女性には、疲れた身体を癒す効果があります。葉酸は血液を作る働きがあるので、血行を良くして栄養素を全身に巡らせることができます。
また、母乳は血液を元にして作られていますから、母乳の出を良くすることもできます。産後のホルモンバランスの乱れによる抜け毛を防ぐ働きもあります。
その他の人に関する効果
冒頭でお話ししたように、葉酸は妊娠に関係ある人だけが摂るべき栄養素ではありません。
妊娠とは関係のない、その他大勢の人にももちろん良い効果があります。
- 肌、髪の毛、爪を健康に保つ
- 生理不順の改善
- 便秘の改善
- 貧血の予防
- 動脈硬化の予防
美容だけでなく健康にも良い効果があることが分かりますね。葉酸は細胞分裂を促し、タンパク質を合成する働きがあります。
髪の毛や肌、爪は、タンパク質から作られています。タンパク質をいくら摂っても、葉酸が足りていなければ髪の毛や肌を健康に保つことはできません。美肌や美髪を目指している人は、葉酸を摂ることを心がけてみてほしいと思います。
葉酸の赤血球を生成するという働きは、血液を増やすことにもつながります。血液が増えれば生理不順は改善し、貧血の予防にもなるのです。
血液が増えると血行も良くなりますから、冷えが改善され、代謝が良くなることによりダイエットの効果も高まります。細胞分裂の促進は、腸内の粘膜細胞にもいえます。
腸の動きが正常になれば便秘などのトラブルも改善していきますね。そして葉酸の最大の健康効果が、動脈硬化の予防です。動脈硬化の原因の1つが、ホモシステインというメチオニン(アミノ酸)が代謝されるときにできる物質です。
血中のホモシステインが上昇すると動脈硬化のリスクが高まるのですが、葉酸はホモシステインを代謝する働きがあります。
体内にホモシステインを残さないので、サラサラの血液を維持できるというわけです。動脈硬化は高血圧や脳梗塞など、他の病気の引き金にもなります。葉酸を摂ってホモシステインをしっかりと代謝していくことで、健康を維持していくきっかけとなるでしょう。
まとめ
葉酸には、私たちが思っている以上にたくさんの効果があります。そして、その効果は多岐に渡るものだということが分かったと思います。
「葉酸は何のために摂るの?」と聞かれると、その答えは難しいと言わざるをえません。
なぜなら葉酸にはたくさんの働きがあり、どの働きによる効果を目的にしているかは人それぞれ違うからです。
結論として言えることは、妊娠中の人もそうでない人も、葉酸を摂る意味はある、ということです。健康のためにも葉酸を摂ることを心がけてみてください。葉酸は緑黄色野菜、レバー、豆類などに豊富に含まれています。