一般的に「貧血」というと、鉄分の不足によって起こる「鉄欠乏性貧血」を思い浮かべると思います。確かに貧血の人の大半は、鉄欠乏性の貧血です。
しかし、中には、鉄分をいくら補給しても貧血の症状が改善しない人もいますよね。貧血=鉄分と思っている人からすると、「鉄分を摂ってるのになんで改善しないの?」と思うかもしれませんね。
もしかしたらその貧血は、鉄欠乏によるものではなく、「葉酸不足」によるものなのかもしれません。
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葉酸には赤血球を作る働きがある
ではここからは、葉酸と貧血の関係について見ていきましょう。貧血の症状が出たとき、すぐに葉酸不足を疑う人はあまりいません。
先ほどもお話ししたように、貧血の大半は鉄欠乏によるものです。葉酸はビタミンB群の一種ですが、体内で作ることはできません。そのため、毎日食事から補う必要があります。
葉酸の肝臓での貯蔵量は、約5mgです。そして、1日に必要な量は50~100μgと言われています。もしも食事での葉酸摂取量が10μgほどの生活が続くとすると、約4ヶ月ほどで肝臓の貯蔵量を使いきってしまうことになるのです。
こうなると、当然「葉酸欠乏症」の症状が出てくるのは想像できますよね。葉酸には、ビタミンB12とともに「赤血球を作る」という働きがあります。
葉酸はDNAの合成をし、細胞分裂を促進するという重要な働きを持っています。葉酸が不足すると、この「DNAを合成して細胞分裂を促進する」という一連の流れが阻害されてしまうわけです。
そのため、骨髄で赤血球が成熟する過程において、細胞分裂が正常に行われなくなり、異常な赤血球が作られるようになってしまいます。いわゆる赤血球のなりそこないのことで、赤血球が巨大化してしまうんですね。
巨大化した赤血球は造血能力には優れているのですが、赤血球として使うことはできないため、いくら増えても意味がありません。赤血球が作られなければ、血液の量も少なくなり、そのせいで貧血の症状が出てしまうというわけです。
このような葉酸不足が原因で起こる貧血を、赤血球が巨大化してしまうことから「巨赤芽球性貧血」と呼んでいます。
この貧血のメカニズムとしては
- 葉酸の摂取量が著しく減る
- 正常な細胞分裂ができなくなる
- 骨髄で異常な赤血球が作られる
- 巨赤芽球性貧血になる
ということになります。実は、巨赤芽球性貧血は葉酸不足だけでなく、ビタミンB12が欠乏しても発症します。ビタミンB12にも、葉酸と同じく赤血球を作るという働きがあるからです。
葉酸欠乏による貧血とビタミンB12欠乏による貧血の違いとは?
では、同じ「巨赤芽球性貧血」ですが、葉酸欠乏とビタミンB12欠乏では、何か違いがあるのでしょうか。
もちろん血液検査をすればすぐに分かるのですが、ビタミンB12欠乏の貧血であっても、葉酸を摂取することで貧血症状は改善することがあるのです。
しかし貧血症状が改善しても、実際に不足しているビタミンB12は不足したままなわけですから、これでは根本的な改善にはなっていませんよね。
独断で決めるのではなく、おかしいと思ったらきちんと医療機関を受診するようにしましょう。
葉酸欠乏による貧血は
- 野菜不足の人
- アルコール中毒の人
- 妊娠中の人
に多く見られ、一般的な貧血症状以外にも
- 味覚低下
- 食欲不振
などの症状が出ることがあります。
一方ビタミンB12の欠乏は
- 高齢者
- 小腸や胃の摘出手術を受けた人
に多く見られ、
- 四肢のしびれ
- 歩行障害
などが見られることがあります。葉酸不足かビタミンB12不足かを見極めるには、この「貧血以外の症状」に注目する必要があるのだと言えるでしょう。
どちらの貧血にしろ、足りないものを補充することで症状は改善していきます。飲み薬や、場合によっては点滴や注射などで補っていくことになるでしょう。
ここで紹介した葉酸不足による巨赤芽球性貧血は、多くの場合は食事などに気を付けることで防ぐことができます。
葉酸は緑黄色野菜など多くのものに含まれている栄養素なので、極端に偏食をしなければ欠乏症になるようなことはほとんどないのです。
しかし妊娠中など、普段より葉酸を多く必要とする時期はサプリメントなどで葉酸を補うことが貧血予防になると言えるでしょう。
妊娠中は、食事だけで葉酸を摂ることは難しいと言わざるを得ません。吸収率の高いサプリメントで葉酸を摂り、しっかりと貧血予防をしていきましょう。
まとめ
貧血と一言でいっても、その原因は1つではありません。葉酸不足やビタミンB12欠乏の貧血の場合、それを改善するためにはしっかりと「何が足りていないのか」を知ることから始める必要があります。
貧血の予防は、鉄分の補充だけでなく、食事内容を見直したり、葉酸を補充することも大切です。食事の改善は簡単そうに見えて意外と大変なこともありますから、サプリメントも上手に活用していきましょう。