葉酸や鉄分は、妊娠中には特に必要な栄養素です。
葉酸は妊娠初期、鉄分は妊娠後期に積極的に摂取するべきと言われていますが、どちらも妊娠したら摂りたい栄養素であることに変わりはありません。
さて、そんな葉酸と鉄分ですが、「食事のみ」で必要量のすべてを補うことは可能なのでしょうか。
厚生労働省はサプリメントからの摂取を推奨している
妊娠していない人の場合、1日あたりの葉酸推奨量は240μgです。
平均摂取量が250μgくらいですから、普段の食事で葉酸は十分に摂れている人が多いことか分かります。
しかし、妊娠中の人や妊娠を計画している人の場合、普段の食事の他に400μgの葉酸が必要だと言われているのです。
しかも、厚生労働省が勧めているのは「サプリメントから400μgの葉酸を摂る」ことです。
実は食品に含まれる葉酸は、体内での吸収率がとても低いのです。
食品に含まれる葉酸はポリグルタミン酸型葉酸で、ポリグルタミン酸型葉酸はこのままでは体内で吸収することはできません。
一度モノグルタミン酸型葉酸に分解しなければならないのです。
モノグルタミン酸型葉酸にしなければ吸収できないのですから仕方ないのですが、分解される過程で葉酸の50%ほどは失われてしまうそうです。
サプリメントに使われているのは、すでに体内で吸収されやすく加工されたモノグルタミン酸型葉酸です。
ポリグルタミン酸型葉酸よりも吸収率が高く、効率的に葉酸を摂取することができるのです。
そのため、厚生労働省は妊娠を計画している人や妊娠の可能性がある人は「サプリメントから400μgの葉酸」を摂ることが勧められているというわけです。
食事から葉酸の摂取は難しい
ここ数年で、サプリメントはかなり身近なものになってきました。
健康なために普段から何かしらのサプリメントを飲んでいるという人も多いです。
とはいうものの、サプリメントにあまり良い印象を持っていない人がいることも事実です。
食品なら何を食べたか一目瞭然ですが、サプリメントの粒には何が入っているのか分かりません。
本当に記載されている栄養素が入っているのか分からないというところから、サプリメントを懸念している人もいますよね。
特に昔はサプリメントなどなかったわけですから、「必要な栄養はバランス良く食事をすれば摂れるはずだ」と思うのも無理はありません。
そこで、妊娠中に必要な葉酸をすべて食事から摂るとしたら、何をどのくらい食べればいいのかを調べてみましょう。
最初に、食品に含まれるポリグルタミン酸型葉酸は吸収率が低いという話をしました。
体内での吸収率はよくて50%ですから、ここでは50%とします。
厚生労働省が推奨しているモノグルタミン酸型葉酸で400μgということは、ポリグルタミン酸型葉酸にすると2倍の800μgが必要ということになります。
そして、葉酸は水溶性のビタミンであるため、熱に弱いです。
加熱することや水にさらすことで、その半分が失われるそうです。
ここでは、加熱することで葉酸含有量の50%が失われるとして考えていきます。
葉酸が豊富に含まれている代表的な食品に、ホウレン草があります。
ホウレン草には、100gあたり210μgの葉酸が含まれています。
しかし、調理で失われる分と体内での吸収率を考えますと、実際に得られるのは約4分の1です。
つまり、約50μgですね。
するとどうでしょう。
400μg分の葉酸を摂るためには、約800gものホウレン草を毎日食べ続けなければならないのです。
葉酸は水溶性のビタミンであることから、一度にたくさん摂取しても尿として排出されてしまいます。
体内に貯めておくこともできませんから、毎日摂り続けなければなりません。
葉酸が含まれているものはホウレン草だけではありません。
焼き海苔、枝豆、ゴマ、クルミ、レバー、煎茶などにも含まれています。
どの食品から摂ってもいいのですが、相当な量を食べることになるのは言うまでもありません。
これが現実的かというと、決して現実的ではありませんよね。
なかなか難しいと言わざるを得ません。
少しでも葉酸を無駄にせずに体内に吸収させるためには、果物などから「生のまま」摂ったり、煮物やスープは汁まで飲むようにしましょう。
鉄分はタンパク質やビタミンCと一緒に摂る
妊娠中には、鉄分も必要です。
鉄分は貧血予防のために、日頃から意識して摂取しているという人もいるでしょう。
鉄分は動物性食品に含まれているヘム鉄のほうが吸収率は高いです。
とはいえ、今の食事で何gの鉄分が摂れたのかを知るのは難しいことです。
鉄分が豊富なレバーは、食べすぎることでビタミンAの過剰摂取も気になります。
鉄分の吸収率を少しでも高めるためには、タンパク質やビタミンCを一緒に摂ることをおすすめします。
まとめ:食事のみでは難しいことも…
結論から言わせてもらうと、妊娠中に必要な葉酸や鉄分を食事のみで摂ることは、かなり難しいことだといえます。
意識したからといって摂れるものでもありませんし、気にしすぎて食事そのものがストレスになってしまっては元も子もありません。
もちろんバランス良く食事をすることは大切ですが、時にはサプリメントを利用することも検討してみてくださいね。