ガンは、日本では常に死因の上位にランクインしています。ガンを治すためには手術が基本ですが、同時に放射線治療や投薬治療を併用することも多いものです。
手術でガン細胞を除去して完治したと思っても、別の場所に転移してしまった…という話は、決して珍しいものではありません。
ガンの治療に用いられる薬はいくつかありますが、その中でも比較的メジャーな薬がメトトレキサートです。
メトトレキサートはいわゆる「葉酸拮抗阻害薬」と呼ばれる種類の薬で、葉酸の働きを阻害することによってガン細胞の増殖を抑えることができます。
メトトレキサートは、ガン治療の他、リウマチの治療などにも用いられることがありますね。
ガン治療の増殖にはDNAの合成が欠かせず、そのDNAの合成には葉酸が欠かせません。しかし、葉酸によるDNAの合成は、なにもガン細胞にだけ働くものではありません。
正常な細胞もDNAを合成して、日々細胞分裂を繰り返しているんですよ。そのため、メトトレキサートによる葉酸代謝阻害の働きは正常な細胞にも現れ、重大な副作用をもたらしてしまいます。
そんなメトトレキサートの副作用を軽減するために用いられるのが、ロイコボリンという薬です。
ロイコボリンとは葉酸活性型製剤のこと
ロイコボリンは、葉酸活性型製剤のことです。
メトトレキサートによる過度な細胞増殖の抑制を、すみやかに回復することが使用の目的になります。
もともとメトトレキサートのような抗がん剤は、「細胞増殖の早い細胞」に対して効果を発揮するようになっています。
ガン細胞は他の細胞と比べて増殖のスピードが早く、放っておくとあっという間に体内はガン細胞だらけになってしまうでしょう。
しかし、私たちの正常な細胞のなかには、ガン細胞ほどではないものの比較的細胞増殖の早いものもあります。
- 血球細胞
- 生殖器細胞
- 髪の毛の細胞
これらはメトトレキサートの「抗がん剤」としての作用を受けやすく、細胞の増殖を阻害されてしまいます。
抗がん剤の副作用で髪の毛が抜けたりするのは、このせいだと言えるでしょう。
メトトレキサートは活性型の葉酸ですから、フォリアミンなどの葉酸剤を飲むよりも、すみやかに副作用を軽減することができますよ。
ガン治療や白血病の治療の際には、メトトレキサートが大量に使われます。メトトレキサートの量が多ければ多いほど、副作用も強く出るということは容易に想像できることでしょう。このような場合にロイコボリンを投与することを、「ロイコボリン救助療法」と呼んでいます。
この呼び方からも、ロイコボリンがいかにメトトレキサートの副作用を軽減する効果が強いのかが分かりますね。
ロイコボリンには抗がん剤の作用を強める使い方もある?
実は、ロイコボリンは「メトトレキサートの副作用軽減」以外にも、もう1つの使い方があります。
それはなんと、テガフール・ウラシルなどの消化器系のガンに使われる薬の「抗がん作用」を強めるというもの。ロイコボリン自体はビタミン誘導体ですから、抗がん作用などはありません。
葉酸としての相乗効果によって、抗がん剤の働きを強めることができるのでしょう。
「抗がん剤」として使われることもあれば、「抗がん剤の副作用を弱める」ために使われることがあるなんて、なんだか不思議な気がします。
ロイコボリンのメインは副作用軽減
ロイコボリンには2通りの使用法があるという話をしましたが、やはりメインとして使われるのは「メトトレキサートの副作用軽減」のほうでしょう。
メトトレキサートのような葉酸拮抗阻害薬によって葉酸の働きが阻害されてしまうと、場合によってはいのちに関わる事態にもなりかねません。
たとえば赤血球が作られなくなるなどの骨髄障害があげられます。葉酸には赤血球を作るという働きがありますが、メトトレキサートによってこの働きが阻害されてしまうわけです。
赤血球が作られなければ当然貧血になりますね。ガンの治療のためとはいえ、抗がん剤にはつらい副作用があることも理解しておかなければならないのです。
ロイコボリンが処方されたときは、きちんと服用してくださいね。メトトレキサートはリウマチの治療にも使われるという話をしましたが、リウマチ治療に使われるくらいの量の場合には、ロイコボリンよりもフォリアミンが処方されることが多いようです。
ロイコボリンもフォリアミンも葉酸に代わりはありませんが、ロイコボリンのほうが効果が強いと言えるでしょう。
どちらが処方されるかは、メトトレキサートの量と医師の判断によるのです。
まとめ
メトトレキサートの服用時にロイコボリンが使われる理由についてご紹介しました。ロイコボリンは、メトトレキサートによる重大な副作用をすみやかに軽減するために用いられるお薬です。
メトトレキサートの抗がん作用は効き目抜群である反面、副作用も強く出てしまうもの。少しでも副作用を軽減するため、処方されたお薬はきちんと飲むことを忘れないでくださいね。