食べ物から摂取した葉酸は、体内でどのように使われているのでしょうか。すべての栄養素は、そのままでは体内で使うことはできません。
必要な分だけ吸収され、不要な分は尿や便として排出されるのが普通です。葉酸はどのような形で、利用されているのでしょうか。
葉酸はまずテトラヒドロ葉酸に還元される
体内に入った葉酸は、まずテトラヒドロ葉酸に還元されます。体内で何かしらの働きをするためには、必ず「テトラヒドロ葉酸」の形になっていなければなりません。
テトラヒドロ葉酸がメチル化され、葉酸を必要としている各組織に分布されていくのです。「メチル化」という単語が出てきましたが、メチル化とは一体何のことなのでしょう。
メチル化というのは、様々な基質にメチル基が置換、もしくは結合することをいいます。
葉酸はメチル基(-CH3)やメチレン基(>CH2)といった炭素(C)を持つものから炭素基を受け取り、別の物質へ渡すという役割を担っています。
この役割のうち、メチル基に関わるものが主にメチル化と呼ばれるものですね。葉酸が炭素の受け渡しをしなければ、葉酸の様々な働きを得ることはできません。
葉酸の「核酸の合成」「ホモシステインの代謝」といった一連の働きは、すべてメチル化やメチレン基の受け渡しを行うことで得ることができているんですよ。特に肝臓では、脱メチル化した葉酸の還元やメチル化が、非常に活発に行われています。
メチル化した葉酸を、胆汁内に排泄しているのも肝臓なんですよ。牛や豚のレバー(肝臓)に葉酸が豊富に含まれているのも、肝臓で葉酸のメチル化が活発に行われているためだと言えるでしょう。
ではここで、葉酸のメチル化による働きを1つご紹介しましょう。それは、アミノ酸の一種であるホモシステインを、メチオニンに代謝するというもの。
メチオニンというタンパク質は、肝臓でホモシステインに代謝され、再びメチオニンになるというリサイクルをしています。
ホモシステインが増えると肝臓から血液内にホモシステインが流れ出てしまい、「高ホモシステイン血症」という病気になってしまいます。
ホモシステインは本来ならば血液内にあることはありません。ホモシステインの一部はシステインという物質に変換され、一部は尿として排出、そして残りは再びメチオニンになるわけです。
ホモシステインが血液内に出てしまうと、悪玉コレステロールと結合して血管の壁などに張り付いてしまい、動脈硬化の引き金になると言われています。
動脈硬化は血液の流れが悪くなることで、心筋梗塞や脳梗塞の原因にもなるのです。ホモシステインが体内、血液内にあることは、これらの病気の危険因子がある、ということでもありますね。
動脈硬化を防ぐためにも、葉酸によってメチル化されることがどんなに重要なことなのかがお分かりいただけたでしょう。
葉酸がなければホモシステインがメチル化されることはないので、ホモシステイン→メチオニンという代謝は行われなくなってしまいます。
葉酸のメチル化によるその他の働きとは
先ほど、ホモシステインをメチル化してメチオニンに代謝するという流れについて説明しました。葉酸は炭素の受け渡し役ですから、体内でのすべての働きに「メチル化」が行われていることになります。
葉酸の働きには様々なものがありますが、その中でも特に重要なのが「核酸の合成」「赤血球の生成」という2つでしょう。
この2つの働きは、生命維持と直接的な関係があるものですよね。核酸が合成できなければ細胞分裂や細胞の増殖はできませんし、赤血球が作られなければ血液が作られないということです。
これがどんなに重大なことか、お分かりいただけるでしょうか。私たちが健康に毎日を過ごすため、そして生きるために葉酸の摂取が必要不可欠だということです。
そんな葉酸の「核酸合成」におけるメチル化を阻害するのが、一部の抗がん剤です。DNAの合成経路を遮断することで、新たなガン細胞の増殖を防ぐというのがこのタイプの薬の目的になります。
このような薬は葉酸不足による副作用が強く出る傾向にありますから、医師の指示通りに葉酸を補充しなければなりません。
葉酸のメチル化という働きは、私たちにとってはなくてはならないものなのですね。葉酸を必要としている組織に運ばれる時点では、すでに葉酸によるメチル化は完了しています。葉酸をしっかりと体内で利用するためには、葉酸のメチル化をスムーズに行えるようにしなければなりません。
まずはしっかりと葉酸を吸収できるよう、吸収率の良いサプリメントから葉酸を摂るようにしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
葉酸のメチル化という働きについてご紹介しました。葉酸は、様々な物質にメチル基から受け取った炭素基を渡すことで、物質のメチル化を行っています。
葉酸を体内で利用するためには、このメチル化という働きはなくてはならないものです。葉酸が足りないと様々な不調を招くことになりますから、せめて葉酸不足にならないようにしっかりと葉酸を摂っていきたいですね。