ビタミンは、実に多くの種類があります。ビタミンは決して主役級の働きをすることはありませんが、私たちが生きるためにはなくてはならないものなのです。
ビタミンにはそれぞれ決まった働きがありますが、その効果は単体での摂取ではあまり得ることはできません。ビタミンはそれぞれが補助的な役割をしているため、複数のものを一緒に摂ることで相乗効果を得ることができるのです。
さて、そんな数多くのビタミンですが、ここでは「葉酸」についてお話ししていきたいと思います。
葉酸はホウレン草の葉から発見された栄養素
まずは手始めに、葉酸の歴史をたどってみましょう。葉酸の歴史は意外と新しく、発見されたのは1941年のことです。
ホウレン草の葉から発見されたため、「葉酸」と名付けられたそうです。葉酸はビタミンB群の一種であり、ビタミンB9、ビタミンMなどとも呼ばれているんですよ。
ちなみに化学名は「プテロイルグルタミン酸」といいます。一般人が普段の生活で、「プテロイルグルタミン酸」という化学名を聞くことはあまりないでしょう。
私たち一般人には、「葉酸」という名称で広く知られています。葉酸、プテロイルグルタミン酸のモル質量は441.3975g/molで、分子量は44.4です。分子量というのは、相対分子質量とも呼ばれていますね。
ビタミンB複合体の1つであるプテロイルグルタミン酸の化学式は「C19H19N7O6」となっています。高校時代や大学時代に化学を専攻していた人なら、なんとなく理解できることでしょう。そうでない人には、正直なところ何を言っているのかちんぷんかんぷんかもしれませんね。
プテロイルグルタミン酸(葉酸)は、食品に含まれているときは糖やタンパク質などと結合しています。天然の葉酸のことを「ポリグルタミン酸型葉酸」というのですが、聞いたことのある人もいるでしょう。
サプリメントの比較などで、よく出てくる言葉ですね。
「ポリ」というのは、化学の分野において数を数える言葉なので、ポリグルタミン酸型葉酸というのは、グルタミン酸型の葉酸が複数結合している状態だといえます。
そして、ポリグルタミン酸型葉酸は、そのままでは体内に吸収されることはできません。
葉酸は小腸の粘膜から吸収されるわけですが、吸収するためには、小腸粘膜にある「葉酸コンジュガーゼ」からモノグルタミン酸型葉酸に変換されなければならないのです。
「モノ」というのは「1つ」という意味なので、モノグルタミン酸型葉酸というのはグルタミン酸型葉酸1つだけということになります。
このような経路を経て、食べ物から摂取した葉酸は体内に吸収されていくのです。
葉酸の働きや必要性は?
では、そんなビタミンB群の一種である葉酸には、どのような働きがあるのでしょうか。葉酸は妊娠中に必要というイメージがありますが、それは間違いではありません。
葉酸の働きについてまとめてみましょう。
- DNAを合成する
- 細胞分裂を促進する
- 赤血球を生成する
- ホモシステインを代謝する
- 胎児の先天性障害リスクを軽減する
葉酸の主な働きとしては、このようなものがあります。この中でも特に重要視されているのが「胎児の先天性障害リスクを軽減する」というものでしょう。
ダウン症や神経管閉鎖障害のリスクは、葉酸を摂ることで70%も軽減することができるんですよ。妊娠中は普段の食事にプラスして400μgの葉酸が必要だと言われています。
わざわざサプリメントから摂取を推奨されているのは「妊活中」や「妊娠中」の人だけですので、葉酸がもっとも必要なのはこの時期に該当する人だと言えるでしょう。
妊活や妊娠に該当しない人は、食生活を見直すことは必要ですが、厚生労働省から「サプリメントでの葉酸摂取」が推奨されているわけではありません。
とはいえ、妊娠以外の人に葉酸が必要ないというわけではありませんよ。先ほど紹介したように、葉酸には様々な働きがあることが分かっているからです。
まとめ
葉酸はホウレン草の葉から見つかったこともあり、緑黄色野菜などに豊富に含まれています。しかし、食品から必要な量を十分に補うことは、簡単なことではありません。葉酸はビタミンB群の一種、つまり水溶性のビタミンなのです。水溶性のビタミンは水に溶け、火に弱いという特徴があります。
そのため、たとえ多くの葉酸を含有している食べ物を食べたとしても、調理の過程で大半が失われ、さらに吸収される過程で分解されてしまうのです。
小腸の粘膜に吸収されるためには、ポリグルタミン酸はモノグルタミン酸に変換されなければならないという話をしましたね。
この過程がなければ葉酸は体内に入っても何もすることができませんから、バランスの良い食事を心がけても、せいぜい吸収できるのは250~300μgくらいではないでしょうか。
そのため、食事が偏っていることを自覚している人ならなおさら、サプリメントから葉酸を摂ることをおすすめします。
サプリメントの葉酸はすでにモノグルタミン酸型に分解されていますので、厄介な変換経路を経ずに小腸粘膜までたどりつくことができるのです。
葉酸不足が続くと、巨赤芽球性貧血などの葉酸欠乏症の症状が出ることもあります。症状が出てからでは遅いですから、今すぐにでも生活習慣、特に食生活を改善し、場合によってはサプリメントも検討してみてください。