葉酸というビタミンには、「核酸を合成する」という大きな働きがあります。
ビタミンと聞くと「美肌」や「体調を整える」などの効果・働きが思い浮かびますが、葉酸には他のビタミンにはない特徴があるのです。
そもそも、「核酸」とは何なのでしょうか。
ここでは、葉酸による「核酸の合成経路」やサプリメントによる葉酸の違いなどについてご紹介します。
核酸の合成経路
核酸というのは、DNAやRNAのことをいいます。
DNAは遺伝情報の保存、RNAには遺伝情報を転写する働きがあります。
つまり核酸とは遺伝情報に関わる成分のことをいい、すなわちそれは生命の維持や増殖に欠かせないものであることを示しています。
核酸が合成できなければ、細胞を作ることはできません。核酸は、私たちのからだでいうなら心臓のようなものですね。なければ生きることはできません。
葉酸は、メチル基やメチレン基などの炭素を持つ物質から炭素基を受け取り、別の物質へと基を移転することで生理反応と関わっています。
なかなか難しい話ですが、葉酸が受け取った炭素基を別物質へと移すことで、核酸を作っているということです。
核酸(DNA、RNA)は塩基、五炭糖、リン酸が結合したヌクレオチドという状態で存在しています。ヌクレオチドを作るために葉酸が必要だということです。
葉酸が不足すると核酸が作れなくなりますから、細胞分裂も行えなくなり、健康を維持することが難しくなります。
また、これはおなかの中の赤ちゃんにも同じことがいえます。おなかの中の赤ちゃんは自分で栄養を摂ることはできません。
赤ちゃんは、母親の胎盤を通して栄養をもらっています。母親の栄養がすべてなのです。
赤ちゃんは、おなかの中で1から細胞や組織を作っていきます。およそ10ヶ月間かけて、作っていくわけです。
母親の葉酸が足りないと、赤ちゃんの核酸の合成がスムーズに行われず、細胞分裂も行われなくなることがあります。
先天性の障害を患うリスクが高まるということです。このことから、妊娠中は普段よりも多くの量の葉酸が必要だと言われているんですね。
食品の葉酸とサプリの葉酸の違い
葉酸はビタミンなので、もちろん食品にも含まれています。主に緑黄色野菜や果物、レバーなどに豊富に含まれています。
このような食品に含まれている天然の葉酸は、ポリグルタミン酸型葉酸といいます。水溶性のビタミンであるため、水に溶けやすく熱に弱いです。
そのため、調理の過程で大部分が失われてしまうとも言われています。
洗ったり火を通すことで失われてしまうわけですから、いくら葉酸含有量の多い食品を食べても、推奨量まで到達するのはなかなか大変です。
そして、さらに追い討ちをかけるかのように、ポリグルタミン酸型葉酸は体内での吸収率も低いのです。だいたいですが、半分くらいしか吸収しません。
1日の必要量240μgの葉酸を摂るためには、倍の480μg分を摂らなければなりません。
調理後の葉酸が480μgでなければなりませんから、食品の葉酸含有量だと1000μg分以上は必要だといえます。
しかも葉酸は水溶性のビタミンで体内に蓄積しておくことはできません。過剰な分は尿として排出されてしまいますから、毎日摂らなければならないのです。
妊娠中の場合はその2倍は葉酸を摂る必要があります。それを毎日です。現実的に考えて、それはなかなか難しいことだといえます。
葉酸のもっとも必要な時期は妊娠初期であり、この時期はつわりがひどい時期でもあります。
そんな時期に「葉酸を含む食べ物」にこだわるのは、人によっては苦痛を伴うものになるかもしれません。
そこで、厚生労働省も推奨しているのがモノグルタミン酸型葉酸の摂取です。日本人の葉酸摂取量の平均は250μgほどで、推奨摂取量を超えています。
妊婦は推奨量にプラス240μgが必要ですから、この分をサプリメントで補おうという考えです。
サプリメントの葉酸、モノグルタミン酸型葉酸は体内で吸収されやすく加工された、いわゆる合成葉酸です。
合成葉酸というと聞こえが悪いですが、食品由来のモノグルタミン酸型葉酸なら天然葉酸となんら変わりはありません。
結局のところ、食品の葉酸は体内でモノグルタミン酸型葉酸に変換されてから吸収されるからです。
サプリメントではあらかじめ「モノグルタミン酸型葉酸」にしてあるので、体内での吸収率も85%以上と高くなっています。簡単、かつ確実に葉酸を補うことができるわけです。
葉酸は核酸の合成に欠かせないものですから、食品+サプリメントから確実に補うことが大切だといえます。
ただ、サプリメントの葉酸にも2種類あります。
1つは先ほどお話しした食品由来のモノグルタミン酸型葉酸、そしてもう1つは石油などの食べられないものから作られたモノグルタミン酸型葉酸です。
石油などの化学合成の葉酸は危険です。数百円などで買える安価な葉酸サプリメントのほとんどは化学合成の葉酸を使用しています。
「核酸の合成」という目的だけでみれば、化学合成の葉酸でも問題はありません。葉酸は葉酸ですから、核酸の合成は問題なく行われます。
核酸の合成経路に異常が出ることもありません。しかし、化学合成葉酸は肝臓などの内臓に負担をかけます。
健康を促進するどころか、むしろ健康を害する恐れもあるわけです。食品の葉酸とサプリメントの葉酸の違いは
- 安全かどうか
- 体内での吸収率
の2つです。メリットとデメリットをしっかりと理解して納得のうえ、葉酸のサプリメントを選ぶようにしてくださいね。