ペメトレキセド(商品名=アリムタ)は、抗がん剤の一種です。葉酸と分子構造の似ている薬で、葉酸の働きを阻害することから「葉酸代謝拮抗薬」と呼ばれています。
ペメトレキセドは内服薬ではなく、点滴静注薬となります。
基本的には入院中に投与される抗がん剤となるのですが、なぜなのでしょうか。それは一言でいうなら、ペメトレキセドが「重大な副作用を伴う薬」だからです。
ペメトレキセドの効果と副作用
抗がん剤はみなさんのイメージ通り、強い副作用の出るものが多いです。中でもペメトレキセドは、圧倒的に副作用が出る確率が高く、それもひどくなることが多いと言われているのです。
「ペメトレキセド」は葉酸拮抗薬で、複数の葉酸代謝酵素を同時に阻害することでDNA合成阻害作用を持つ。悪性胸膜中皮腫、進行・再発の非小細胞肺癌に用いる。必ず葉酸・ビタミンB12を前投与する。妊婦に禁忌。副作用は骨髄抑制、間質性肺炎、腎不全、感覚神経障害など。商品はアリムタ注
— 医薬品bot (@Iyakuhin_bot) January 2, 2017
そのため、万が一に備えて医師の管理下で投与されているのでしょう。
実際、ペメトレキセドによる副作用は必発で、因果関係を否定できない死亡例が、臨床試験通算で1.08%も生じているのです。
これほどまでに強い副作用が出てしまうのは、ペメトレキセドが「複数の葉酸代謝経路を阻害する」ことでガン細胞の増殖を抑えているというところにあります。
たとえば同じ葉酸代謝拮抗薬であるメトトレキサートは、「ジヒドロ葉酸還元酵素」の働きを阻害することでガン細胞の増殖を防ぐ薬です。
阻害する葉酸代謝経路は1つだけなので、抗がん剤の中では比較的副作用も少なくすむでしょう。
しかし、ペメトレキセドは
- チミジル酸合成酵素
- ジヒドロ葉酸還元酵素
- グリシンアミドリボヌクレオチドホルミルトランスフォーゼ
という複数の葉酸代謝酵素を同時に阻害することができるのです。
ガン細胞は私たちの想像を超えるスピードで、どんどん増殖していきます。それこそ恐ろしいスピードで増えていくのです。
そのため、何かしらの自覚症状が出たときにはすでに、身体中がガン細胞に犯されているということも少なくありません。抗がん剤で症状が抑えられる段階であったことを、まだマシだと思うしかないのかもしれませんね。
しかしガン細胞も、「DNA」がなければ増えていくことはできません。これは、ガン細胞の増殖を抑えるためにはものすごく重要なポイントだといえるでしょう。
DNAの合成さえさせなければ、ガン細胞は増えることができないのですから。
これが、ペメトレキセドの抗がん剤としての働きです。
葉酸は体内で「炭素の受け渡し」をすることでDNAの合成に関わっています。葉酸の働きである複数の経路を遮断してしまえば、当然ガン細胞のDNA合成も防ぐことができるといえます。
メトトレキサートよりも確実にガン細胞の増殖を抑えることができる反面、強い副作用が出ることは想像できますね。
それでは、ペメトレキセドの副作用にはどのようなものがあるのでしょうか。主なものは、やはり「葉酸欠乏」による症状です。
葉酸には赤血球を作るという作用もありますから、貧血、白血球減少、好中球減少、ヘモグロビン減少、血小板減少など、血液に関するものが多くなるでしょう。
白血球や好中球が減少するため免疫が弱まり、他の病気や合併症などを発症しやすくなるともいえます。葉酸の「DNAやRNAを合成する」という働きを断つと、こんなにもたくさんの症状が出てしまうのです。
ペメトレキセドの抗がん剤としての効果がガン細胞にのみ作用すれば一番なのですが、正常細胞の中でも細胞増殖の比較的早いものに関しては、ガン細胞と間違えて作用してしまうというデメリットがあることも否めません。
ペメトレキセドと葉酸・ビタミンB12はセットで投与する
ペメトレキセドを投与するとき、必ず葉酸とビタミンB12もセットで投与されます。ペメトレキセドのみが投与されることはありません。
これは、先ほどもお話ししたようにペメトレキセドには重篤な副作用があるためです。ペメトレキセドを投与することが確定したとき、すぐに点滴にてペメトレキセドが投与されるわけではありません。
必ず、ペメトレキセドを投与する7日前から1日1回、葉酸を0.5mg連日経口投与するのです。パンビタン末という葉酸の薬で、0.5mg飲むことになります。また、ビタミンB12に関してもペメトレキセドを投与する前から投与が始まります。
ビタミンB12は1日1回1mgを筋肉注射にて投与し、ペメトレキセドの投与が始まってからは9週ごとに1回のペースというのが一般的でしょう。
どのくらいの量の葉酸、ビタミンB12を投与するかは副作用の出方や医師の判断にもよりますから、必ずしもこの通りとは限りません。
しかし確実に言えるのは、ペメトレキセドと葉酸・ビタミンB12の投与は必ずセットである、ということ。
葉酸やビタミンB12を投与することでペメトレキセドのすべての副作用を抑えることはできませんが、これらを投与することでずいぶん軽減することはできるでしょう。
まとめ
ペメトレキセドは効果が高い反面副作用も強い薬ですから、しっかりと葉酸、そしてビタミンB12を補って少しでも副作用を軽減したいところですね。