葉酸は体内で様々な形へと姿を変え、私たちの生命維持と深い関わりを持つ栄養素です。正直なところあまり知られていない栄養素ではありますが、「葉酸」とは一体何なのでしょうか。
ここでは、葉酸の主な働きや「前駆体」としての葉酸についてくわしくご紹介していきたいと思います。
前駆体とは?
先ほど「前駆体」という言葉を使いましたが、前駆体とは何のことだかご存じでしょうか。普段の生活ではあまり使いませんので、知らないという人がいても不思議はありませんね。学生時代に化学を専攻していた人は、おそらくご存じのことでしょう。
前駆体というのは、化学反応によって、ある物質が生成される前の段階にある物質のことです。なんだか少し難しい話ですね。
たとえば、Aという物質とBという物質を化学反応させてCという物質を生成するとします。このとき、AとBは「Cの前駆体」ということになるわけです。
実際にはこのようなシンプルな化学反応ではありませんが、イメージとしてとらえておいてください。
さて、それでは「葉酸」は体内でどのような働きをしているのでしょうか。葉酸そのものは、「補酵素の前駆体」として活躍しています。葉酸は体内で酵素反応によって、ジヒドロ葉酸→テトラヒドロ葉酸へと変わっていきます。
体内で様々な働きをするのは「テトラヒドロ葉酸」であり、テトラヒドロ葉酸は
- DNAの合成
- 赤血球の生成
- アミノ酸の合成
の補酵素として働いているんですよ。どういうことかというと、DNAの合成、赤血球の生成、アミノ酸の合成には必ず「炭素」が必要になります。この炭素の受け渡し役を担っているのがテトラヒドロ葉酸なのです。
テトラヒドロ葉酸がなければ、炭素の受け渡しをすることができません。それはすなわち、DNAの合成などができない、ということ。DNAというのは遺伝子情報を司っているもので、どの細胞にも必要なものです。むしろDNAがきちんとコピーされなければ、正常な細胞分裂を行うことはできません。妊娠中に葉酸が必要だと言われているのは、このためです。
胎児は一生のうちでももっとも細胞分裂が盛んに行われますが、葉酸が足りないとその細胞分裂のどこかでミスが生じることは否めません。このミスが、二分脊椎症などの先天性障害、先天性奇形を引き起こすことにもなりかねないのです。
妊娠前から葉酸をサプリメントから十分に摂取することで、先天性障害のリスクは70%も軽減することができるんですよ。
これは、「補酵素の前駆体」としての葉酸の働きによるものだといえます。
チミジル酸って何?
葉酸の前駆体について調べていると、「チミジル酸」という物質名をよく見かけます。チミジル酸とは何なのでしょうか?
チミジル酸というのは
- DNAの合成
- 赤血球の生成
- アミノ酸の合成
のために必要な「前駆体」です。テトラヒドロ葉酸は炭素の受け渡しをする補酵素なので、葉酸は「補酵素の前駆体」だという話をしましたね。チミジル酸とテトラヒドロ葉酸の両方がなければ、DNAの合成などを行うことはできないのです。
私たちの体内では、日々絶えずこのような前駆体の働きを行っていて、健康を保つことができているのですね。
葉酸の働きをまとめてみよう
葉酸は妊娠中に必要な栄養素というイメージがありますが、決して妊娠中にだけ必要なわけではありません。葉酸にはDNAの合成だけでなく、赤血球の生成やアミノ酸の合成といった働きもある、という話をしました。これは、すべての人に該当するものでしょう。
たとえば貧血気味の人は、鉄分だけでなく葉酸も十分に摂取しなければなりません。葉酸のアミノ酸の合成というのは、メチオニンの代謝のことを指しています。メチオニンは肝臓でホモシステインになり、再びメチオニンになるというリサイクルを行っています。
このホモシステインがメチオニンになる過程で必要なのが葉酸です。ホモシステインが肝臓に増えると血液内に流れだし、動脈硬化の原因になると言われているのです。ホモシステインは、脳梗塞や心筋梗塞の危険因子としてとらえられているんですよ。
葉酸が不足していると、血液がドロドロになってしまう、とも言えるでしょう。ドロドロの血液は健康を害する一番の原因でもあります。特に生活習慣が乱れている人、食生活が偏っている人は動脈硬化などになるリスクが高いです。
しっかりと葉酸を摂取して、これらを予防していきましょう。
まとめ
葉酸は、体内で様々な働きを行う「補酵素の前駆体」だということが分かりました。ヒトは体内で葉酸を合成することができないため、食品やサプリメントなど外から摂取することが必須となります。
食品に含まれる葉酸は吸収率も低いので、確実に摂りたいのならやはりサプリメントがおすすめ。サプリメントは吸収率も良く、葉酸を体内で有効活用するために欠かせない栄養素が配合されているものも多いです。
葉酸サプリもたくさんあるのですが、できることならビタミンCとビタミンB12が配合されたものがおすすめですよ。自分に合ったものを選び、しっかりと体内で「補酵素の前駆体」として葉酸を働かせてくださいね。